建設業界の職人の高齢化は深刻な問題であり、若手人材の確保も難しいのが実状です。改正建設業法にはこれらの問題を見据えた取り組みが盛り込まれていますが、一朝一夕に解決できるものではありません。
すぐそこまで来ている熟練職人の大量離職時代に備え、職人高齢化の課題を整理し、デジタル化による解決策を解説します。
目次
-設備業界の職人高齢化が引き起こす経営課題
 ・熟練職人の大量退職で失われるもの
 ・若手人材確保の困難と育成期間の長期化
 ・技術継承の停滞が招く事業継続リスク
-従来の技術継承手法の限界と課題
 ・「見て覚える」職人文化とOJT中心の指導の問題点
 ・技術の属人化がもたらす組織的脆弱性
-中小企業でもできるデジタルを活用した技術継承
 ・熟練技術のデジタル化による可視化
 ・自社施工動画の教材化
-設備業界の未来を支える技術継承改革
設備業界の職人高齢化が引き起こす経営課題
熟練職人の大量退職で失われるもの
設備業にとって自社施工力は競争力の根幹であり、特に熟練職人の技術や長年の経験で蓄積された知識は貴重な財産です。職人の高齢化により、多くの会社がこの財産を失う危機に瀕しています。
熟練職人の離職とともに保有する技術やノウハウが失われ、受注可能な工事件数の減少や高度な施工に対応できなくなるなど、会社全体の施工力が低下し、事業の継続性にも大きな影響を与える可能性があります。
若手人材確保の困難と育成期間の長期化
熟練職人が高齢化する一方、建設業界全体で若手人材の確保が難しい状況が続いています。仮に若手を採用できたとしても、一人前の職人に育成するまでには長い時間がかかります。
育成期間中は、指導担当の負担が大きくなり、本来の生産性を発揮できなくなる可能性があります。また、若手の技術指導を特定のベテラン職人に依存している場合、その人が退職すると人材育成が機能しなくなり、組織全体の技術力向上が阻害されるリスクがあります。
技術継承の停滞が招く事業継続リスク
技術継承の問題は、単なる技術の喪失にとどまらず、事業継続そのものを脅かすリスクとなります。
例えば、特定メーカーの古い設備をメンテナンスできる職人がいなくなれば、その案件を受注できなくなり、その分野での競争力を失うことになります。また、工事品質の低下も避けられません。未熟な職人の比率が高くなるほど、手直しの発生率が高くなり、コスト増加と品質低下を招きます。施工不良による事故やトラブルが発生すれば、信頼の損失と最悪のケースでは法的責任を問われるリスクもあります。
技術継承が適切に行われないことで、残った社員が将来への不安を感じ、より安定した同業他社への転職を考える場合があります。熟練職人の離職が施工力の弱体化、競合他社への人材流出といった悪循環のトリガーとなるリスクがあります。
<ここまでのポイント>
・熟練職人の退職により技術や現場ノウハウが失われる
・若手人材の採用困難と長期育成コストが経営を圧迫
・技術継承失敗は受注機会損失と施工力の低下を招く
情報提供:石田データサービス株式会社
 
  